人事部長が語る!「働きやすい会社」を目指した制度改革 ~後編~

新型コロナウイルス感染症の流行を機に社会状況が大きく変わり、新しい価値観が生まれ、働き方も多様化してきています。
こうした中、「働きやすい会社」を目指してさまざまな制度改革を行う岩永執行役員(人事部長)に話を聞きました。
※本記事は後編です。前編はこちら
ワークライフバランスの重要性 ~安心感と充実感~
――当社は2度の夏季休暇があるなど休暇制度が充実しています。大型連休に組み込んで全社的に一斉有休取得日が設定されており、有休取得率も高い印象です。
元々2度の夏季休暇は、業種的に忙しくなる冬場の休日振替として設けられたもので、現状も下期集中型ではありますが、以前ほどではありません。ただ、一般企業が就業日で子供が夏休みに入っている時期の休暇は、家族との時間が確保でき、混雑や旅費が高い時期を避けられるメリットがあります。多くの従業員が有効活用しているこの夏季休暇の仕組みは続けていきたいと思っています。
一方で、こうした連休時に工事やメンテナンスをせざるを得ない工事・カスタマーサービス部門の方々は恩恵が受けられません。これを出張手当などの色々なサポート拡充が担っている部分もあります。他にも試行錯誤してはいるのですが、まだまだ改善しなければならないポイントです。
一方で、こうした連休時に工事やメンテナンスをせざるを得ない工事・カスタマーサービス部門の方々は恩恵が受けられません。これを出張手当などの色々なサポート拡充が担っている部分もあります。他にも試行錯誤してはいるのですが、まだまだ改善しなければならないポイントです。


――25年度は文化体育活動(部活動)の再開もありました。活動状況はいかがですか?
25年度は6つの登録があり、現在26年度の募集をしていますが、既に2つ追加申請があります。これも90年代のバブル崩壊や電力業界不況の業績悪化で中断し、思考停止したままになっていた支援の取組を再開させたものです。これにより会社の認定を受けた部活には補助が出るようになりました。
以前は9人制女子バレーで国体優勝などもしていましたし、現在も剣道は全国大会で活躍しています。良い成績が出ることは喜ばしいことではあるものの、当社においては、誰でも取り組める活動として組織を越えたコミュニケーション活性化の一つの仕組みにつなげてもらいたいと考えています。
以前は9人制女子バレーで国体優勝などもしていましたし、現在も剣道は全国大会で活躍しています。良い成績が出ることは喜ばしいことではあるものの、当社においては、誰でも取り組める活動として組織を越えたコミュニケーション活性化の一つの仕組みにつなげてもらいたいと考えています。

採用活動への意識 ~選ばれる会社に向けて~
――当社は新卒定着率が比較的高くなっており、就職活動中の方への対応の良さをよく聞きますが、意識していることはありますか?
新入社員に入社を決めた理由を聞くと、応対した人事部やOB・OG、面接官の対応や印象の良さを挙げてもらうことが多く、身の引き締まる思いです。実際、面接では素の自分を出してもらえるように、ざっくばらんな会話を心掛けています。
コロナ禍の入社者はリモート中心の採用活動のためお互いのミスマッチもあり、新卒3年定着率は少し落ち込んだのですが、従来から高い比率を維持してきました。選ぶ側、選ばれる側という意識ではなく、一緒に仕事ができる仲間になれるかという視点で、お互いが本音で話せると入社後にミスマッチが起こりにくいですし、お互いに良い結果を生むと思います。
コロナ禍の入社者はリモート中心の採用活動のためお互いのミスマッチもあり、新卒3年定着率は少し落ち込んだのですが、従来から高い比率を維持してきました。選ぶ側、選ばれる側という意識ではなく、一緒に仕事ができる仲間になれるかという視点で、お互いが本音で話せると入社後にミスマッチが起こりにくいですし、お互いに良い結果を生むと思います。
――入社後のフォローはどうですか?
入社後1・2年目はキャリア採用を含め全員にカウンセラーや保健師など、専門職の方とのフォロー面談があり、不安に感じていることやフィジカル・メンタルのトラブルなどが無いかケアするようにしています。
また、自分の部署以外に相談できるメンターが新卒に限らずキャリア採用(中途採用)の方にも設定され、2~3年目の壁にぶつかる時期の悩みを一人で抱え込まないようフォロー体制ができていると思います。
また、自分の部署以外に相談できるメンターが新卒に限らずキャリア採用(中途採用)の方にも設定され、2~3年目の壁にぶつかる時期の悩みを一人で抱え込まないようフォロー体制ができていると思います。

――キャリア採用では、社員による紹介制度の対象を拡大し応募が増えたと聞きました。実際どのような状況でしょうか?
19年に導入した時は工事職限定で、24年に技術・技能職に拡大したところ約13倍に増えました。他社にも紹介制度はありますが、それと比べても多い実績です。知人・友人から紹介してほしいと言ってもらえるということは、社員が「いい会社」と感じていなかったら成り立たないことでしょうし、社内外から「いい会社」と思ってもらえているということなのかなと感じています。
将来を見据えて ~モチベーション高く働き続ける~
――25年の春闘では賃金・賞与の満額回答もあり、年々ベースアップをしています。ここにはかなり力を入れられているのではないでしょうか?
各社人手不足の中、他社を見てもどんどんベースアップが進んでいる反面、毎年同じペースで上げ続けることが難しい会社も出てきています。その中でもなんとか上げ続けたいのですが、一方でコストとして会社の業績を圧迫することも事実です。ただし、こうした取り組みは単なるコストではなく、従業員一人ひとりが安心して力を発揮するための「人への投資」だと考えています。こうした人への投資が、従業員のモチベーション向上につながり、コストを上回る形で業績や会社の成長に表れていくことが重要で、私の役割は、組合や社員の声を聞き、そのバランスを見極めていくことだと思っています。

――初任給も年々上がっている分、他の社員との給与バランスなども課題になりますね。
これについては短期・長期で考える必要があります。ベースアップで前年の社員と逆転しないようにする、いわゆる初任給是正の対応は、短期的な対応として既存制度に則って行っています。一方、抜本的な対応は社員全体の賃金カーブの是正になりますが、賃金制度だけでなく評価制度も影響してくるので、長期的な検討が必要です。そのため、家賃補助や手当など可処分所得*の増額の取り組みはこの部分への補填の意味もあります。
*可処分所得:給与から税金・保険料などの支払義務のある費用を差し引いた手取り収入
*可処分所得:給与から税金・保険料などの支払義務のある費用を差し引いた手取り収入
――当社は平均勤続年数が長く、定年後も再雇用制度で多くの方が働き続けています。
当社の平均勤続年数の長さは、自己都合退職率が低いことが要因です。しかし、従来1%台だったのが、24年度に2%台になりました。同規模製造業では10%なので圧倒的に低い数値ではあるものの、売り手市場で、かつ転職に抵抗がない世代が増えていることもあり、危機感を持ちました。
その一方で、キャリア採用で入社した方の多くが、以前の会社と比べて労働条件や社内の環境・雰囲気などがすごく良いと言ってくれるのも事実です。そこで、他社や業界と比べた当社の位置付けなどを明確にし、当社の魅力を分かってもらおうと、社内向けの人事データの見える化も始めました。総閲覧数が約1,400回と、既に多くの人に見てもらっていて、関心の高さが窺えます。
その一方で、キャリア採用で入社した方の多くが、以前の会社と比べて労働条件や社内の環境・雰囲気などがすごく良いと言ってくれるのも事実です。そこで、他社や業界と比べた当社の位置付けなどを明確にし、当社の魅力を分かってもらおうと、社内向けの人事データの見える化も始めました。総閲覧数が約1,400回と、既に多くの人に見てもらっていて、関心の高さが窺えます。


――4月からの定年延長に対しては、どのような想いがありますか?
定年延長と聞くと賃金水準は同じと考えがちですが、他社や公務員でも60~70%が一般的です。当社は従来の再雇用制度(嘱託採用)でも70~80%と高く、今回の制度変更ではこれをベースとして、各種手当の継続や60歳以降の賃金水準・昇給制度の改善を行いました。
本音を言えば、変わらないことが望まれているでしょう。しかしながら、給与以外にも退職金・年金などまで改革しようとすると、制度の抜本的な変更として国の認可も必要となり長期的な検討が必要なほか、既に再雇用制度で嘱託として働いている方もいれば、60歳定年のつもりでライフプランを考えてきた方もいるので、全体のバランスも見極めながらの見直しにせざるを得ませんでした。
将来的にはさらなる改革を進め、モチベーション高く働き続けてもらえるようにしたいと考えていますので、理解してもらえるとありがたいなと思っています。
本音を言えば、変わらないことが望まれているでしょう。しかしながら、給与以外にも退職金・年金などまで改革しようとすると、制度の抜本的な変更として国の認可も必要となり長期的な検討が必要なほか、既に再雇用制度で嘱託として働いている方もいれば、60歳定年のつもりでライフプランを考えてきた方もいるので、全体のバランスも見極めながらの見直しにせざるを得ませんでした。
将来的にはさらなる改革を進め、モチベーション高く働き続けてもらえるようにしたいと考えていますので、理解してもらえるとありがたいなと思っています。
「働きやすい会社」を目指して
――現在の状況やこれからの取組に向けて、岩永部長の考えや想いを教えてください。
私が以前、人事部にいた頃は業績も悪く、賃金カットや手当の減額、廃止、施設の売却、果ては二度の早期退職と、「働きやすさ」とは真逆の取り組みをせざるを得ない時代でした。今は毎年、最高売上、最高利益を更新するという非常に良い状況で、昔の辛い経験があるからこそ、今こそ過去に止めてしまったことやこれまでできていなかったこと、新しいことをやろう、当社はそれができる会社だ、という想いがあります。
また、住友電工の100%子会社になったからこそ日新電機社員としての気概を持ち、さらに一段も二段もステップアップした会社になるために、自ら考え、変化を作り、挑戦する人材(自律型人財)づくりが重要だと考えており、思考停止せずにチャレンジすることが風土になるような仕組みや仕掛けを考えていきます。
その一つの視点は切磋琢磨する組織であることで、人事部でもたくさんプロジェクトを立ち上げて、若手にたくさん議論してもらうようにしています。時々ベテラン社員が入ってアドバイスをすればレベルも上がり、ベテラン社員の刺激にもなる。そういう場が増えると人は自然と伸びていきます。これからはそうした組織づくりと人づくりに力を入れていきたいと思います。
その一つの視点は切磋琢磨する組織であることで、人事部でもたくさんプロジェクトを立ち上げて、若手にたくさん議論してもらうようにしています。時々ベテラン社員が入ってアドバイスをすればレベルも上がり、ベテラン社員の刺激にもなる。そういう場が増えると人は自然と伸びていきます。これからはそうした組織づくりと人づくりに力を入れていきたいと思います。

※本記事の内容はインタビュー当時のものです


