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技報ピックアップ 「下水処理施設におけるカーボンニュートラルに向けたエネルギーソリューション」

当社は技術情報を「日新電機技報」として発行しています。
今回は2025年11月に発行したVol.70 No.2(通巻164号)に掲載している特集論文「下水処理施設におけるカーボンニュートラルに向けたエネルギーソリューション」をピックアップし、概要を紹介します。

カーボンニュートラル化が求められる下水処理施設の現状

日本では、2030年までに温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げています。2021年度の下水道施設からの温室効果ガスの発生量は約520万トンであり、これは日本の温室効果ガス排出・吸収量の約0.5%に相当します。また、自治体の事務事業における温室効果ガス排出量のうち、下水処理が占める割合は大きく、自治体が排出量削減の目標を達成するためには、下水処理施設のカーボンニュートラル化が不可欠です。

下水処理施設におけるカーボンニュートラルの実現に向けた主な取組みとしては、高効率機器・新技術導入や制御の最適化によるエネルギー消費量削減のほか、再エネ導入などがあります。
また、ICTやAIを活用した監視制御・維持管理システムにより、エネルギー管理の効率を向上させる技術の開発も徐々に進んでいます。

消費電力量の削減に貢献する当社の技術

下水道施設における水処理設備の消費電力量の全体に占める割合は45%と高いことから、消費電力量を削減することが下水道施設全体の消費電力量の削減に有効であり、その方策として水処理設備の省エネ運転や送気量制御の適正化が挙げられます。
水中撹拌機(かくはんき)や循環ポンプの制御などにもさまざまな技術が使われていますが、ここでは当社が開発した水中のアンモニア(NH4-N)濃度を連続的に計測するNH4-N計を活用して送気量を適正に制御する技術の概要を紹介します。

1 制御方法
本技術は、反応タンク内の上流側に設置したNH4-N計の計測値(以下、前段NH4-N濃度)によるフィードフォワード(FF)制御と、下流側に設置したNH4-N計の計測値(以下、後段NH4-N濃度)によるフィードバック(FB)補正を組み合わせて反応タンク送気量の自動制御を行う技術です。
これは、「アンモニア計による送気量フィードフォワード制御技術」として、日本下水道事業団の新技術導入制度における新技術Ⅰ類に登録されています。

2 技術の特長
下水処理は水質汚濁防止法により、放流水の排水基準が定められており、有機物や窒素などの流入負荷の時間変動に応じて、反応タンクに適正な空気量を供給する必要があります。
従来技術では、流入負荷量が低い時間帯もDO(溶存酸素)濃度が目標値となるよう送気量を制御するため、必要酸素量に対して送気量が過剰になりやすい傾向があります。一方で、流入負荷量が急激に増加した場合は、制御動作の遅れにより送気量が不足し、硝化の進行が不完全になることが懸念されます。
これに対して本技術は、NH4-N流入負荷量を指標とする反応タンクへの流入負荷量の変動に対してリアルタイムに追従するフィードフォワード制御を採用しているため、必要酸素量の変動に対して送気量を適正に追従させることが可能となります。さらに、後段NH4-N濃度の計測値と目標値との偏差に応じて送気量をフィードバック補正することにより、後段NH4-N濃度を目標値に維持することが可能となります。

3 導入効果
本技術により、従来技術に対して概ね10%以上※の送気量の削減、およびそれに伴う送風機消費電力の低減が見込めるほか、処理水NH4-N濃度の安定化を図ることができます。
※消費電力の詳細な低減効果については、送風機の仕様、動力特性、運転条件などに依存


アンモニア計を活用した送気量制御技術の概要


アンモニア計を活用した送気量制御技術と従来技術との比較(イメージ)

下水処理施設ならではの資源の有効活用

ここでは下水処理施設ならではの資源エネルギーの有効活用である消化ガス発電を紹介します。

下水処理施設で回収された下水汚泥は濃縮消化タンクに投入されますが、タンク中では微生物の働きにより消化ガスが発生します。消化ガスはメタンと二酸化炭素を含んだ可燃性ガスであり、温室効果ガスであることから大気放出ができません。そのため、従来は消化タンクを加熱するためのボイラー燃料として使用するか、焼却処分していました。

しかしながら、消化ガスは専用のガス発電機を用いることで、発電機燃料として使用可能です。また、消化ガス発電の際に発生する排熱を回収し、消化タンクの加温に使用したり、冷房・暖房用および給湯用の熱源として利用したりすることができます。さらにガスホルダ内に貯留することができるため、処理場が電気や熱を必要とするタイミングで利用可能で、カーボンニュートラルにも貢献できる再エネの有効活用となります。

納入事例:木津川上流流域下水道 木津川上流浄化センター

デジタル技術の活用によるスマート化

下水処理施設のエネルギー消費量は大きく、エネルギーマネジメントが非常に重要となります。効率的なエネルギーマネジメントを行うことで、温室効果ガス排出量の削減が期待できます。さらに、人口減少に伴って課題となる設備の維持管理の効率化と省人化に対しても、AIを活用した自動制御やデータ分析による劣化診断等を活用し、計画的な設備保全や更新計画の立案を進めることが求められています。

特に、AIが過去の実績データを基にして将来の水質変動を予測し、それに基づいて維持管理者が水質悪化を未然に防ぐことができれば、維持管理者の負担を軽減できます。当社は、このような技術を開発し、運転管理の効率化に向けた取組みを実施しています。

本記事は論文の抜粋となりますので、詳細は是非以下をご覧ください。

下水処理施設におけるカーボンニュートラルに向けたエネルギーソリューション

技報最新号(2025年11月発行 Vol.70 No.2)のご紹介

脱炭素社会の実現に向けて、持続可能なエネルギーシステムへの転換が求められる中で、エネルギーを取り巻く環境は日々変化し、ニーズも多様化しています。このようなニーズに対応するため、当社ではさまざまなエネルギーソリューションを提案しています。今号では、その中から蓄電池活用のソリューションや、下水処理施設向けのカーボンニュートラルに向けた取り組みなどを紹介します。

<特集記事>
・蓄電池活用ソリューション
・下水処理施設におけるカーボンニュートラルに向けたエネルギーソリューション
・高圧大容量瞬低対策装置MEGASAFEの再開発について
・国際無線通信規格Wi-SUN FAN 1.1認証の世界初の取得と今後の展望

<一般論文>
・パワーデバイスのためのチャネリングイオン注入技術

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