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NISSIN ELECTRIC

開発ストーリー 配電網未整備地域に電気を届けるマイクロ変電所

当社はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助事業として、インドでマイクロ変電所の実証研究を行いました。本事業の内容や開発までのストーリーを紹介します。

電力供給の仕組みと電気が届かないエリア

マイクロ変電所の説明に当たって、まずは日本国内のイメージで電力供給の仕組みについて説明しましょう。
電気は下図のように、電線を通じて発電所から超高圧変電所・一次変電所・二次変電所などを経て送られます。その過程で、長距離送電を行う発電所では電圧を上げ、その後は変電所で電圧を下げるという変換を行います。
一般家庭のコンセントで考えると、発電・送電時の電圧は数百~数千倍あるので、安全に使うために電圧を下げることが必須です。

日本は配電網が十分に整備されているので、限られた条件下でない限り電気が届かない場所はほぼありませんが、世界に目を向ければ電気が届かないエリアがまだまだあります。発電所からの特別高圧*1送電線が敷かれていても、配電網が未整備あるいは不十分なため、一般家庭まで電気が届いていないという地域は少なくありません。
この場合、発電所から該当エリアまでをつなぐ変電所の建設や配電網の整備が必要ですが、従来型変電所では設備コストやスペースの課題が、ディーゼル発電機などでは運用コストや環境負荷の課題が発生します。
その課題を解決するために開発したのがマイクロ変電所です。

マイクロ変電所とは

マイクロ変電所は、段階を経て電圧を下げる従来型の変電所とは異なり、一気に一般家庭で使用できる電圧まで下げる変電所です。例えば、従来型変電所では66kV*2から6.6kV程度(1/10)に下げた後、変電所や配電網を経由して最終的に一般家庭で使う200V程度(1/30)まで下げます。マイクロ変電所では、66kVから200V程度(1/300)まで直接降圧します。
コストやスペースに課題があり、大規模な変電所の建設が難しい小規模集落のニーズに合致しているのがマイクロ変電所の強みです。

マイクロ変電所のカギとなる電力用計器用変圧器の大容量化

マイクロ変電所のカギとなるのは、高電圧(特別高圧)を低電圧(低圧)に変換する電力用計器用変圧器(PVT:Power Voltage Transformer)です。
当社は従来、送電線の電圧測定のために高電圧を低電圧に変換する計器用変圧器(VT:Voltage Transformer)を製造しており、60カ国以上約4万台の納入実績があります。この技術を活用し、再エネ発電用開閉所における電源確保を目的に、高電圧を低電圧に変換する容量25kVAのPVTを2012年に開発、2016年より販売してきました。
マイクロ変電所の実証に向け、100kVAに大容量化したPVTは2024年に開発しました。100kVAは、約50~100世帯分の電力量に相当します。

NEDOの補助事業採択 インドでの実証研究に向けて

マイクロ変電所の実証研究は、NEDOの補助事業として実施しています。
NEDOとは以前より、当社技術を活かしてエネルギーや環境の課題解決に貢献ができないか議論を進めていました。その中で、大容量化したPVTにより配電網未整備地域に電気を届けるマイクロ変電所を提案し、インドでの実証に向けて動き出しました。2020年に実証事業として採択された後、実証前調査を経て実証研究を開始し、機器の開発や据付・調整、実証運転および試験などを行う長期プロジェクトとなりました。
インドの送配電網の現状や特性、近年50℃にも達する猛暑を記録するインドの気象条件など、さまざまな環境条件を考慮したシステム検討を行うため、慎重な調査・検討を行いました。

実証試験で得られた成果

実証では、規定電圧範囲から逸脱することなく稼働していることや、電力系統の瞬時電圧低下*3・停電発生時の復旧後の速やかな運転再開などを確認しました。また、高温多湿で多様な環境条件下における安定した電力供給の実現など、マイクロ変電所の有用性をより具体的に実証することができました。
例えば、電力供給では変換効率の高いシステム構成が重要です。今回実証データから、マイクロ変電所の効率は90%であることを確認しています。一方、変電所にて電圧を段階的に下げる従来方式であれば想定される効率は86%*4。インドの発電所から需要家までの電力損失(AT&C Losses)が2023年実績で17%であることから、運用効率は83%です。この指標により、マイクロ変電所は効率的な運用ができていると評価しています。

さらに、事前調査で把握していたインドにおける配電網の特性を考慮し、当初は電圧調整装置を負荷側に設置することで、安定性を重視した構成にしていました。実証を通して安定した稼働を確認できたことにより、電圧調整装置を省略する構成とすることで、マイクロ変電所の運用効率が95%に向上する見込みであり、さらなるコスト低減の実現が可能であることを確認しました。

技術論文のご紹介

当社は技術情報を「日新電機技報」として発行しています。
本件も機器開発やシステム構成など詳細は技術論文で紹介していますので、是非ご一読ください。
特別高圧(66kV)から低圧電力を直接取得可能な大容量PVTを活用したマイクロ変電所

 
*1 特別高圧は7kV(7000V)を超える電圧を指す。高圧は直流で750~7000V以下、交流で600~7000V以下。低圧は直流で750V以下、交流で600V以下。
*2 kV=キロボルト。1000Vが1kVに相当する。
*3 電力系統の影響などにより、一時的に電圧が下がる現象。
*4 日本における運用効率の実績から、実証試験時の平均負荷である25kWを需要家に供給する場合として算出した数値。

<関連リンク>
インド初、電源用計器用変圧器(PVT)を用いたマイクロ変電所の実証運転を開始しました ―配電網の未整備地域を対象に電力の安定供給を実現する技術を確立―
電源用計器用変圧器(PVT)を用いたマイクロ変電所実証事業 成果報告会をインドで開催 ~現地での安定稼働とシステムの有用性を確認~