ニュースリリース

水銀レスで環境にやさしい高電圧・大電流半導体スイッチの本格販売を開始

日新電機株式会社（本社：京都市右京区、社長：齋藤成雄）の100％子会社である日新パルス電子株式会社（千葉県野田市、社長：渡辺和雄、以下：日新パルス電子）は、核融合実験装置で使用される大電力パルス電源において高エネルギーを発生させるスイッチとして使用されている電子管スイッチ（イグナイトロン）の代替となる、水銀レスで環境にやさしい高電圧・大電流の半導体スイッチを開発、2018年10月より本格的に販売を開始しました。

これまで、レーザー核融合や高エネルギー密度科学研究に用いられるフラッシュランプや、物性解析に用いられる強磁場発生装置において、コンデンサに溜めたエネルギーを瞬間的に放出するスイッチング素子として、水銀を接触媒体とする電子管スイッチが使用されてきました。2013年に水銀および水銀を使用した製品の製造と輸出入を規制する「水銀に関する水俣条約」が国連環境計画の外交会議にて全会一致で採択・署名され、水銀使用機器使用制限の機運が世界的に高まったことを受け、日新パルス電子は、2014年から水銀を使用しない高電圧・大電流半導体スイッチの開発を開始しました。2016年3月に大阪大学レーザー科学研究所（大阪府吹田市）へ初納入、2年以上にわたる運用で安定した動作と信頼性を確認できたことにより、今回本格的な販売に至りました。既存の電子管スイッチの部品レベルでの更新、予備品としての購入のほか、新規開発品への本スイッチの採用が期待されます。

【高電圧・大電流半導体スイッチの特長】

本製品の本格的な販売開始により、2018年度は約20セット2億円の売り上げを目指しています。当社はこれからも、高電圧技術を活用し、環境にやさしい製品を開発し販売してまいります。

高電圧・大電流半導体スイッチ

ご参考までに、水銀は使用していませんが粒子加速器やクライストロン電源などで高繰り返しの大電力スイッチとして使用されているサイラトロンがあります。日新パルス電子ではサイラトロン代替の半導体スイッチも開発しており、現在は大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構（茨城県つくば市）で連続運転試験中です。第15回加速器学会年会において、その安定動作、保守性の良さからサイラトロンに匹敵するスイッチ性能であることが報告され、今後の製品化が期待されています。

■日新パルス電子株式会社の概要

名　　　　称	：	日新パルス電子株式会社
代 　 表　  者	：	代表取締役社長　渡辺 和雄（日新電機(株)理事）
所　  在  　地	：	千葉県野田市山崎2744-3
設　　　　立	：	1968年11月
資　  本　  金	：	12百万円（日新電機(株)100％）
事  業  内  容	：	高電圧電子機器ならびに関連機器の製造・販売、アフターサービス
従 業 員 数	：	33人（2018年10月現在）
ウェブサイト	：	http://www.mmjp.or.jp/peec/

■用語解説

・高電圧・大電流装置

高電圧で大電流（大電力）を発生するために使用される、コンデンサバンクなどを主としたエネルギー源

・加速器

原子核または素粒子の実験や放射線源を得るために、電子・陽子・イオンなどの荷電粒子を高速度に加速する装置

・パルス電源

通常の電源のように電力を供給し続けるのではなく、必要なタイミングで出力のオンとオフを行い、瞬間的に大きなエネルギーを供給し、発熱を抑えること

・電子管スイッチ（イグナイトロン）

水銀整流器の一種で放電管内に封入した水銀と炭素電極間のアーク放電で整流（スイッチング）するもの

・水銀に関する水俣条約

水銀の一時採掘から貿易、水銀添加製品や製造工程での水銀利用、大気への排出や水・土壌への放出、水銀廃棄物に至るまで、水銀が人の健康や環境に与えるリスクを低減するための包括的な規制を定める条約。

【2013年1月】

ジュネーブ(スイス)で開催された政府間交渉委員会第5回会合（INC5）において、国際的な水銀条約に関する条文案が合意され、条約の名称が「水銀に関する水俣条約」に決定

【2013年10月】

熊本市及び水俣市で水銀に関する水俣条約の外交会議及びその準備会合が開催され、60か国以上の閣僚級を含む約140か国・地域の政府関係者の他、国際機関、NGO等、1,000人以上が出席し、水銀に関する水俣条約が全会一致で採択され、92か国（含むEU）が条約へ署名

【2017年8月16日】

条約発効