ニュースリリース
アーカンソー大学のSiCパワーデバイス共同研究プログラムに参画 ~パワー半導体の技術革新へ貢献・持続可能な社会を目指す~
日新電機株式会社(本社:京都市右京区、社長:松下芳弘)のグループ会社で、半導体・中小型フラットパネルディスプレイ(FPD)製造用イオン注入装置の製造販売を手掛ける日新イオン機器株式会社(本社:京都市南区、社長:長井宣夫、以下 日新イオン機器)は、アーカンソー大学(米国・アーカンソー州)のSiCパワーデバイス研究・製造施設「MUSiC(ミュージック)」にて実施される、SiCパワーデバイスについての共同研究プログラムへ参画いたします。
SiCパワーデバイスには、効率性・耐圧性・耐熱性などの優れた特性があり、太陽光発電や電動車(xEV)向けはもちろん、一般的な電子機器などさまざまな用途での活用が期待されています。
MUSiCは、アーカンソー大学の数十年にわたるSiCの研究実績と、SiCパワーデバイスの製造機能と設備を備えており、スタートアップ企業の種となるパワー半導体の新技術や集積回路を生み出すために設立されたアメリカ初となるオープンアクセスが可能な施設です。同施設では、外部研究者や企業による試作・デモ、デバイス設計の機会を得ることが可能です。また学生をトレーニングし、しっかりと訓練された半導体コミュニティの次世代リーダーとなる人材育成も計画されており、アメリカのトップSiCパワーデバイスメーカーの数社ほか、多くのファブレス中小企業が本プログラムへの参画を表明、または検討されています。
日新イオン機器は、SiCパワー半導体を量産できる半導体製造用高温イオン注入装置「IMPHEAT-Ⅱ(インフィート ツー)」を製造しています。同製品をMUSiCへ提供し、SiCパワーデバイス製造に向けたイオン注入レシピの開発について3年間(2025年より開始)、共同研究を行います。これにより、先端デバイスに必要とされるイオン注入についての知見を獲得し、次世代装置へ反映しつつ、パワー半導体の性能向上により、エネルギーの消費を抑え、機器の省エネへと繋がるクリーンで安価なエネルギーを通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。
SiCパワー半導体製造用高温イオン注入装置「IMPHEAT-Ⅱ」
当社グループは、中長期計画「VISION2025」における6つの成長戦略と5つの事業基盤強化に取り組んでいます。本件は、成長戦略の内「環境配慮製品の拡大」「再生可能エネルギー対応」「EV拡大に伴う事業拡大」と、事業基盤強化の内「モノづくり力の強化」「生産性向上」に寄与する事業活動です。
当社グループは事業活動を通して、SDGsへの取り組みを強化しています。本件はSDGsの17の目標の内、下記の目標達成に関連する活動です。
4.質の高い教育をみんなに
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
参考
【用語解説】
-
6つの成長戦略
「環境配慮製品の拡大」「分散型エネルギー対応」「再生可能エネルギー対応」「DXの製品・事業への適用」「新興国環境対応需要の捕捉」「EV拡大に伴う事業拡大」
-
事業基盤強化
「モノづくり力の強化」「生産性向上」「サプライチェーンの多重化」「人事戦略強化」「働き方改革」
-
アーカンソー大学(University of Arkansas)
アメリカのアーカンソー州フェイエットビルに本部を置くアメリカの州立大学で、1871年に創立され、同年に大学として設置されました。
-
MUSiC(Multi-User Silicon Carbide Research and Fabrication Facility)
アーカンソー大学がアメリカ国立科学財団やアメリカ陸軍研究所からの資金提供を受け設立した SiCパワーデバイス研究 ・製造施設です。
-
半導体製造用イオン注入装置
半導体製品を作る拡散プロセスの中で「イオン注入装置」が使われる。イオン注入とは、ボロンやリン、ヒ素、アルミニウムなどの不純物(ドーパント)をイオン化し高エネルギーでウェーハに打ち込む(注入)技術です。プロセスにより中電流機・大電流機・高電圧機などに分類されます。
-
SiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素、炭化シリコン)
SiC(シリコンカーバイド)は、シリコン(Si)と炭素(C)で構成された化合物半導体材料です。Siの10倍の絶縁破壊電界強度と、Siの3倍のバンドギャップを持つため、デバイスの製造に必要なp型およびn型の広範な制御が可能です。これにより、Siの限界を超えるパワーデバイスの材料として高い期待が寄せられています。
-
SiCパワー半導体
電源のスイッチのように大電流をオン・オフすることができる半導体デバイスのこと。パワー半導体は大電圧に耐え、大電流を扱うための特別な構造を持ち、家庭用電化製品から電動車、データセンター、電力系統まで、幅広い分野で電力変換が必要な場所に使用されています。身近な例としては、スマートフォンの充電器が挙げられます。また、パワー半導体は今後の成長が期待される自然エネルギーの利用においても重要とされています。例えば、太陽光発電の発電電力の変換や電気自動車の急速充電器、EV駆動用インバータなどにおいて、パワー半導体は欠かせない存在となります。
-
オープンアクセス
オープンアクセス(Open Access)とは、学術的な情報や研究成果を誰でも自由にアクセスできるようにする取り組みやポリシーのことを指します。これにより学術界や研究者コミュニティの間での情報共有やコラボレーションを促進し、研究の進歩を加速させ、より多くの人々が最新の知見にアクセスできるようになります。
・日新イオン機器株式会社の概要
- 名 称
- 日新イオン機器株式会社
- 代 表 者
- 代表取締役社長 長井 宣夫(日新電機株式会社執行役員)
- 所 在 地
- 京都市南区西九条東比永城町75(GRAND KYOTO 4F)
- 設 立
- 1999年4月
- 事 業 内 容
- 半導体製造用イオン注入装置・FPD製造用イオン注入装置の開発、設計、製造、販売、据付工事・調整、改造及びアフターサービス
- 従 業 員 数
- 260人(2024年3月時点)