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事業展開

インド初、電源用計器用変圧器(PVT)を用いたマイクロ変電所の実証事業を開始 ~配電網の未整備地域を対象に電力の安定供給を実現する技術を確立~

日新電機株式会社(本社:京都市右京区、社長:松下芳弘)は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以降 NEDO)が公募した「エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業」において、インド初の電源用計器用変圧器(PVT)を用いたマイクロ変電所によって電力を供給する実証事業を開始します。
事業開始にあたり、当社は8月21日にTATA powerの子会社で実証を行うデリーの配電会社であるTATA Power-Delhi Distribution Limited(以降 TATA Power-DDL)と契約文書(Project Agreement:PA)を締結しました。

契約文書調印式の様子

【概要】

インドでは電力関連の主要政策として「24×7 Power for All」が掲げられ、すべての地域に対する365日24時間の電力供給を目指しています。しかし、北部や北東部などでは送電線は整備されているものの配電網が整備されていない、またはぜい弱である地域が多数存在しています。そのような地域ではディーゼル発電機を活用したミニグリッドが適用されていますが、化石燃料の消費による大気汚染などが社会問題化しています。

今回の実証事業は電力供給用に大容量化した計器用変圧器であるPVTを用い、特別高圧送電線から低圧の電力を直接取得できるマイクロ変電所を構築することで周辺地域への電力供給を可能にするものです。
通常、送電線を流れる電気は非常に高い電圧であり、変圧器を用い段階に分けて電圧を下げるための大規模な変電所を構築する必要があります。
この時、測定を目的に高電圧を低電圧に変換するのが計器用変圧器(VT)です。ただしこの場合、大規模設備を導入する費用と広い設置スペースの確保が必要かつ複数回変換するためロスが大きくなります。PVTは、近年の再生可能エネルギー普及に伴い国内の発電所などを中心に導入を進めている特別高圧を直接低圧に変換する機器であり、長年幅広い電圧クラスの機器を手掛けてきた技術を駆使し、今回インドの電力環境に合わせて実証用PVTを新たに開発しています。
マイクロ変電所を設置することにより、インドの北部や北東部といったルーラルエリアなど、送電線は敷設されていても配電網が十分に整備されていない地域や未電化地域などにも、大規模な変電所の建設が不要で、環境にも配慮した、費用対効果が高く安定的な電力を供給することを目指しています。

 

【計画】

当社では2018年度からTATA Power-DDLと本事業の実現に向けた検討を進めており、2020年度からはNEDOの助成を受けて取り組んできました。実証用PVTは2024年10月に開発完了を予定しています。本事業の実証期間は2025年度までの予定で、デリー郊外の変電所への据え付けや試験などを経て2025年3月に実証運転を開始し、2026年3月までの運転状況を分析・評価します。なお、PVTを用いたマイクロ変電所の実証事業はインドで初めてとなります。
当社はTATA Power-DDLと共に、取得したデータを用いて環境適合性や電力供給の信頼度、電力品質の有効性、現地の負荷特性などを検証していきます。さらに、配電網の未整備地域や未電化地域に電力を安定供給する技術の確立と、同様の課題を抱えるインドの他地域や諸外国への展開につなげていきます。

事業開始に先立ってNEDOは今年1月10日、インドの電力省傘下の主要な非銀行金融機関Power Finance Corporation Limited.とマイクロ変電所による電力供給を行う実証事業について合意文書(Letter of Intent:LoI)を取り交わしています。当社はTATA Power-DDLのPA締結後、TATA Powerが保有するデリー郊外の変電所にPVTを用いたマイクロ変電所を設置し、特別高圧送電線からの電力を直接低圧に変換、周辺地域に供給する実証事業を開始します。

マイクロ変電所の構築イメージ

プロジェクト体制図

【実証内容】

本事業では当社が持つ変成器の技術を応用し、電力供給用に大容量化したPVTによって特別高圧送電線(66kV以上)から低圧電力(240V)を直接取得可能にするマイクロ変電所について検証します。

マイクロ変電所による電力供給イメージ

マイクロ変電所はPVTに加え、保護装置や開閉装置、避雷器、配電盤などで構成されます。PVTを用いることにより、従来のような大規模の配電用変電所を設置することなく、100kVA程度(マイクロ変電所1カ所あたり50世帯~100世帯に供給可能と想定)の低圧電力を直接送電線から取得することができます。
また静止機器だけで運用可能なため、構成がシンプルで信頼性が高く、従来型の変電所またはディーゼル発電機による電力供給システムに比べ以下の利点があります。

(1)運用コスト低減:発電機への燃料補給や頻繁なメンテナンスが不要なため、運用コストを抑制可能。
(2)省スペース:従来型変電所に比べ省スペースでの設置が可能。
(3)低環境負荷:ディーゼル発電機に比べ大幅なCO2削減(約45%)が可能。

配電網未整備地域の小規模需要への電力供給を想定したシステム比較

※当社による独自評価

開発した実証用PVT

当社グループは中長期計画「VISION2025」において、6つの成長戦略に取り組んでおり、本件は「新興国環境対応需要の捕捉」に寄与する事業活動の一つです。

当社グループは事業活動を通して、SDGsへの取り組みを強化しています。本件はSDGsの17の目標の内、下記の目標達成に関連する活動です。
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
9.産業と技術革新の基盤をつくろう

参考

【用語解説】

関連リンク

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