ニュースリリース
フラットパネルディスプレイ製造用イオン注入装置「iG8」を開発 ~IT製品市場拡大を受けて、超大型ガラス(第8.6世代)基板に対応~
日新電機株式会社(本社:京都市右京区、社長:松下芳弘)のグループ会社で、半導体・中小型フラットパネルディスプレイ(FPD)製造用イオン注入装置の製造販売を手掛ける日新イオン機器株式会社(本社:京都市南区、社長:長井宣夫、以下 日新イオン機器)は、車載ディスプレイやIT製品ディスプレイ(ノートパソコン、タブレット端末)などにOLED(有機発光ダイオード)の適用拡大が見込まれることを受け、従来装置より高い生産性が実現できる第8.6世代(G8.6)ガラス基板に対応したFPD製造用イオン注入装置「iG8」を開発、この度初号機を出荷しました。
2025年6月より、本格的に販売を開始していきます。
日新イオン機器の既存製品の第6世代(G6)ガラス基板対応のFPD製造用イオン注入装置「iG6」は、主にスマートフォン用の中小型OLEDディスプレイ生産ラインにおいて、LTPSおよびLTPO‐TFT製造工程に広く採用され、高性能かつ低消費電力が実現できるディスプレイ製造に貢献しています。
今後、車載用ディスプレイや高性能IT製品向けの需要が急速に増加することが予想されており、それに対応するため、より大面積のG8.6ガラス基板での製造が不可欠とされています。現在、G6ガラス基板を用いてこれらの製品を生産する場合、効率低下が懸念されています。具体的には、15~17インチサイズのディスプレイではG6ガラス基板の利用効率が約70%に留まり、G8.6ガラス基板を使用すると、その利用効率は90%を超え、より効率的な生産が実現可能です。
また、AI技術の普及に伴い、端末の低消費電力化が一層求められ、その結果LTPO技術に対する需要も増加すると見込まれています。さらに、ディスプレイメーカー各社は、より低消費電力を実現できる酸化物半導体技術(IGZOなど)を適用することも検討しています。従来の酸化物半導体TFT製造工程ではイオン注入は用いられていなかったものの、次世代の高精細ディスプレイ製造においては、イオン注入工程の導入が検討されており、さらなる装置需要の拡大も期待されています。
今後はG6ガラス基板と同様に、G8.6対応のFPD製造用イオン注入装置においても世界シェア100%を維持し続けることを目指してまい進し続けます。
【特長】
- G8.6ガラス基板を使用したFPD量産に対応する唯一のイオン注入装置
- 世界中の量産工場で認められた高い信頼性(「iG6」のコンセプトを継承)
- 多様なイオンが扱え、幅広い注入レンジに対応
- iG8
当社グループは中長期計画「VISION2025」において、6つの成長戦略に取り組んでいます。本件は「分散型エネルギー対応」「再生可能エネルギー対応」に寄与する事業活動の一つです。
当社グループは事業活動を通して、SDGsへの取り組みを強化しています。本件はSDGsの17の目標の内、下記の目標達成に関連する活動です。
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
参考
【用語解説】
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フラットパネルディスプレイ製造用イオン注入装置
スマートフォンや、ノート型パソコンなどに利用されるディスプレイ制御用の薄膜トランジスタ(TFT)を形成するために、ガラス基板上の半導体層にリンやホウ素などのイオンを均一に注入する装置。
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第6世代(G6)ガラス基板
現在のスマートフォン生産のメイン基板サイズ。縦1500mm、横1850mm。
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第8.6世代(G8.6)ガラス基板
縦2290mm、横2620mmの大型ガラス基板。第8.7世代(G8.7)と呼ばれることもある。
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OLED
Organic Light Emitting Diodeの略称。有機化合物を用いた発光素子でスマートフォンなどのディスプレイに利用される。
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TFT
Thin Film Transistor(薄膜トランジスタ)の略称。
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LTPS
低温多結晶シリコンの略称。比較的低温で形成される多結晶シリコンであり、薄膜トランジスタの半導体層材料。スマートフォンで広く使われている。
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LTPO
ディスプレイ技術の一種で、低温多結晶シリコン(LTPS)と酸化物半導体(IGZOなど)を組み合わせることで、高速応答と低消費電力を両立する。特にスマートフォンやスマートウォッチで使われている。
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酸化物半導体
酸化物からなる半導体。通常、絶縁性を示すものが多い酸化物の中で、半導体の性質を示す化合物からなる。
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IGZO
インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、酸素(O)から構成される酸化物半導体の略称。
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6つの成長戦略
「環境配慮製品の拡大」「分散型エネルギー対応」「再生可能エネルギー対応」「DXの製品・事業への適用」「新興国環境対応需要の捕捉」「EV拡大に伴う事業拡大」
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日新イオン機器株式会社の概要
名 称
日新イオン機器株式会社
代 表 者
代表取締役社長 長井 宣夫(日新電機株式会社執行役員)
所 在 地
京都市南区西九条東比永城町75(GRAND KYOTO 4F)
設 立
1999年4月
事 業 内 容
半導体製造用イオン注入装置・FPD製造用イオン注入装置の開発、設計、製造、販売、据付工事・調整、改造及びアフターサービス
従 業 員 数
268人(2025年3月時点)
関連リンク
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